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サーコQ&A
―Dr.マデック・サーコ対策セミナー(2007年6月コーキン化学主催)からの質問と返答―

フランソワ・マデック(フランス食品安全長プロフラゴン獣医研究所)
大竹聡(スワイン・エクステンション&コンサルティング)

Q1. PCV2の感染経路(鼻腔、経口、筋注、精液、子宮内、胎盤)におけるそれぞれの危険率または、体内における増殖部位や増殖の要因となるものについて御教授下さい。

A1. それぞれの危険率を数字として出すことはできませんが、感染豚との直接接触が最も一般的な伝播経路であることを考えると、やはり鼻腔・経口が最もリスクが高いでしょう。サーコウイルス感染でもウイルス血症を起こしますから、注射針を介した筋注経路による感染も状況によっては頻繁におこっているものと推測されます。精液・子宮内・胎盤感染については、それが起こりうることは実験的に証明されていますが、生産現場でのインパクトはまだ検証されていません。

サーコウイルスは主に白血球で増殖します。メインの標的細胞はマクロファージとされています。増殖の要因として挙げられるものは、(1)混合感染(特にPRRSやパルボ)、(3)飼養環境ストレス(密飼い、換気など)、(2)過度の免疫刺激(ワクチネーションなど)、(4)過度の免疫抑制(ステロイド剤)が現在のところ解っているものです。


Q2. PMWS発症の診断基準と発症した場合の母豚や子豚に及ぼす2次的な疾病(PRRS,マイコ、PPV、下痢)の発生状況や増体に及ぼす影響およびウイルス排泄状況について御教授ください。

A2. PMWSの診断基準は以下の通りです。

症例の定義

PMWS発症ケースからはPRRSとマイコが高頻度に検出されますし、咳・呼吸困難が臨床的に頻発されるので、PRRS・マイコの発症や病原体排泄が増悪されていると思われます。下痢も頻発します。北アメリカのPMWSケースではサルモネラが高頻度に検出されているという報告があります。いずれにしても、呼吸器症状・消化器症状の両方の併発により、増体への影響は増悪されます。


Q3. 抗体の検査方法や陽転の判断基準と母豚抗体価、移行抗体の関連性、消失期間やそれらレベルとウイルス量の関連性について御教授ください。

A3. 世界のいくつかの国々の研究機関・大学のラボなどで独自のサーコウイルス抗体検査が開発・使用されています。しかしながら現在のところ、少なくともフランスではサーコウイルス抗体検査の市販キットは存在しません。したがって、検査方法がそれぞれ異なるため、一律した陽転判断基準などを設けることができていないのが現状です。近い将来、PCV2エライザが市販キットとして標準検査法として使用できるようになると思います。

我々の経験だと、サーコウイルスの移行抗体は比較的長期間にわたり持続することがわかっています。ただし、その具体的な持続期間やレベルには大きなバラツキがみられます(6週齢までしか持たない個体もいれば、長いものでは16週齢まで持続する個体もいる)。移行免疫のレベルは、母豚の免疫状態と哺乳子豚の初乳摂取状況に大きく依存するからです。ですから、PMWS対策において如何に初乳が大事であるか、何度も申し上げてきた次第です。

サーコウイルス抗体価そのものと、PMWS発症を防御する免疫の度合いとの間にはあまり大きな関連性はないことがわかっています(つまり、抗体価が高いからといってその個体がより免疫がついているというわけではない)。中和抗体はもしかしたら免疫の度合いと直接関連しているかもしれませんが、まだはっきりとわかるまで研究が進んでいません。

通常、サーコウイルスに感染した個体は2週間ほどで抗体陽転が見られ出します。その期間中とその後さらに2週間(ですから、合計約一ヶ月間)は、血液中のウイルス量が非常に高い時期で、したがってウイルスを排泄している可能性が非常に高いです。もちろん個体差もあり、血液中からウイルスが完全に消失するまでにはさらに長い期間を必要とする場合もありますが、最も血中ウイルス量が多い時期=最もウイルス排泄のリスクが高い時期というのは、この1ヶ月間だと言えます。


Q4. ヨーロッパ、アメリカで問題となるPCV2の株の状況やPMWS発症が疑われる場合のワクチン選択の判断基準やワクチネーションプログラムについて御教授下さい。

A4. サーコウイルスの遺伝子相違による株の違いの議論はしばしばされています。いくつかの研究者グループがそれぞれのデータをもとに持論を展開していますが、少なくとも現在までの共通認識としては、「調べてみればPCV2には遺伝子に若干の違いは見られる。ただし、それだけでウイルスの病原性(強毒・弱毒など)を直接決定付けることはできない」とされています。ここ最近、いくつかの国々ではサーコウイルス市販ワクチンが複数メーカーから発売され使用可能となっています。(1)母豚に接種して移行免疫を期待するタイプ、(2)子豚に直接接種して獲得免疫を期待するタイプ、の2パターンがあります。理屈上は、その2パターンどちらも有効であると言えます。


Q5. Dr. Madecの原則の中で、温度、湿度、アンモニア、里子の目標達成のための具体的な方法や、設備的な理由によりAI/AOが困難な場合の使用密度や移動方法における目標設定方法または初乳摂取の円滑な補助の方法があれば御教授ください。

A5. 飼養管理面からみると、PMWS対策にのみ特別必要な技術・方法が存在するわけではありません。その目的を達成するために、それぞれの農場での限られた条件の中で臨機応変に工夫した対応を試みることが重要です。その目安となる環境要因指標としては:

  1. 離乳直後から1週間までの子豚の適正環境温度:28−29度
  2. その後、週齢とともに少しづつ温度を下げていき、25kgで24度が目安
  3. 湿度:60−70%(離乳から肥育を通して)
  4. アンモニア:10ppm以下(離乳から肥育を通して)
  5. 二酸化炭素:0.15%以下(離乳から肥育を通して)

設備的な理由により完全なオールイン・アウトが難しいとしても、豚群同士の直接接触を最小限に抑える方法(小群管理、目くらの間仕切り、など)の工夫はできるレベルまででもやったほうが効果はあるでしょう。ピッグフローの逆流(週齢の大きい豚を小さい豚群に戻す、など)は極力避けるべきです。初乳摂取の工夫に関しては、農場それぞれのやり方があると思いますが、分割授乳などは場合によっては大きな効果が期待できます。


Q6. ヨーロッパにおいて有効だと思われる洗浄や消毒の具体的な方法や薬剤名、あるいは害虫の駆除や飼料中のカビ毒除去のPMWSに対する有効性について御教授下さい。

A6. サーコウイルスに特定した洗浄法や消毒薬剤があるわけではありません。薬剤に関しては、ウイルスに対し薬効があると記されている市販品であれば大概効果があるはずなので、それを推奨通りの濃度・方法にのっとって使用することが大事です。アメリカでは次亜塩素酸系やグルタールアルデヒド+4級塩化アンモニウム剤などが一般的に使われています。発泡消毒法がより効果的であることもわかっています。しかしながら、何よりも大事なことは、表面から有機物が完全に取り除かれたきれいな状態で消毒を行うことです。

寄生虫はPMWS発症の関連要因の中に入っていますので、寄生虫駆除は重要です。カビ毒についてはその役割を示唆する研究報告がいくつかありますが(免疫抑制作用など)、現場実証はまだ十分されていません。


Q7. 母豚のPCV2抗体価を高めるための、具体的な馴致の方法と分娩時間(昼間分娩)のコントロール法について御教授下さい。

A7. PCV2の具体的な馴致方法は、現在のところ確立されていません。今後のさらなる研究と現場検証が必要な分野ですが、現在知りうる限りでは、病豚や内臓ミンチなどを用いた積極的馴致はPMWS対策としては推奨できません。


Q8. オキシトシンの注射による危害比の変動要因と、PMWS発生農場における抗生物質や解熱・鎮痛剤の有効な利用方法について御教授ください。

A8. オキシトシン注射そのものが、PMWS発症の度合いと直接関連しているわけではありません。おそらく、オキシトシン注射を頻繁に行うということは、それだけ母豚の分娩に人が立ち会っている=看護分娩がなされている、という背景が反映されているのではないでしょうか。分娩舎での母豚のコンディションと子豚の初乳摂取がPMWS対策では極めて重要であることを考慮すれば、このことはつじつまが合います。抗生物質や解熱・鎮痛剤はサーコウイルスを直接殺す作用はありませんが、細菌の2時感染を防ぐ・熱を抑えて個体の基礎体力を維持する、などの作用はPMWS発症を低減することに貢献するでしょう。


Q9. ヨーロッパやアメリカにおいて動物性蛋白の飼料(血漿タンパクや肉骨粉)の給与、無給与とPMWS発症の関連性について御教授下さい。

A9. 動物性蛋白飼料とPMWSの関連性についてはここ近年注目されてきた分野ですが、科学的な実証はなされていません。ある特定の血漿タンパク飼料からサーコウイルスが検出されたという報告もありPMWSとの発症と関連性があるのではないかと示唆するデータもありますが、逆にそれを否定するデータもいくつか報告されています。動物性蛋白そのものの汚染よりもむしろ、それを飼料化する際のプロセスの問題(加熱方法・手順など)が大きいのではないかという指摘もあります。いずれにしても、動物性蛋白(特に豚由来)の使用やリサイクル飼養の農場などでは、注意してみる必要があるのかもしれません。


Q10. AIセンターのPCV2の検査方法や体制ならびに流通している精液の汚染状況について教えて下さい。

A10. 大規模なサーベイは今まで特に行われていないのが現状です。ただ、ヨーロッパのいくつかのAIセンターによっては精液PCRなどを用いて汚染度を調べているところもあります。オスとサーコウイルスに関して現在まででわかっていることは:

  1. オスの精液中にサーコウイルスが排泄される可能性がある。
  2. そして、ウイルス血症を起こしているときが最もそのリスクが高い。
  3. 調べようと思えば、精液PCRによって精液のサーコウイルス汚染を検出することができるが、オスがどの程度の頻度でどの位の期間まで精液中にウイルスを排泄するのかはっきりわかっていない。したがって、精液中にサーコウイルスが存在すること自体の意義がまだ明確でない。

精液供給元は、AIセンターなど外部隔離された環境でサーコウイルス循環が活発でない(即ち、抗体価にバラツキがない)状況が望ましいです。精液にサーコウイルスが排泄される頻度、それにより感染するリスク、そうなったときの母豚群の状態、そこから生産される子豚のPMWS発症程度との関連性、などについてさらに検証されれば、今後AIセンターの検査体制の確立・精液汚染状況の疫学サーベイなども今後必要になってくるでしょう。


おわりに

先日のDr.マデック・サーコ対策セミナー(2007年6月鹿児島・東京、コーキン化学主催・アニマルメディア協賛)では、参加していただいた皆様より大変大きい反響を頂き、非常に多くのご質問を承りました(合計80以上)。それらのご質問に一つ一つ個別に対応させていただくことは、マデック先生の都合上、現実的でないと判断し、頂いたご質問をその主旨・内容別に10項目に要約致しまして、その10の質問に対して答えさせていただくという形式を取りました。ご理解・ご了承の程、何卒宜しくお願い致します。

© S. Otake


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